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2013年06月15日

空梅雨の白雨

陰暦五月に降る雨を「五月雨(さみだれ)」といい、古今集以来の雅語です。
歌人たちは憂鬱な季節の雨を「小乱れ(さみだれ)」に掛けて
恋の情緒を詠んだり鬱々とした情感や述懐を込めたりしていました。

暑苦しげに乱れた濡れ髪を「さみだれ髪」と描写した和歌もあります。
梅雨のころの夜が暗いことを「五月闇」といい、そも梅雨の晴れ間が「五月晴れ」でした。

その「五月雨」を「梅雨」と呼ぶだけで急に身近に感じるベタベタな湿気。
「梅雨(ばいう)」を「黴雨(黴=カビ)」と書く気持ち、すんごくよく分かります。

「空梅雨(からつゆ)」は「乾梅雨(かんつゆ)」とも書き、ほかに
「旱梅雨(ひでりづゆ」、「枯梅雨(かれつゆ)」・・・読むだけでカラカラになります。

万物をうるおし育む恵みの雨を「慈雨(じう)」と言い
日照りつづきのところへ降る雨を「旱天の慈雨(かんてんのじう)」と言います。
そのありがたみをシルクにたとえて「錦雨(きんう)」とも。美しい名前です。

「白雨(はくう)」は「ゆうだち」「しらさめ」とも読み「夕立」のこと。
地方によっては「婆威し(ばばおどし)」や「山賊雨(さんぞくあめ)」など
「日本昔ばなし」の風景がまるで目に見えてくるような雨の名前もあります。

「クワバラクワバラ」は雷除けのおまじないなんだそうで
桑畑のような低い繁み避難しなさいという先人の知恵。なるほどー。
雷を意識した記憶はないけれど「除けたい」時に使ってた気がします。

今日は夕立がきそうな天気予報。
急に暗くなって雷鳴を轟かせながら降る雨は「瞋怒雨(しんどう)」や
「瞑怒雨(めいどう)」。字がすでに怖い。クワバラクワバラ。

※ 雨が好きになる本「雨の名前/文:高橋順子 写真:佐藤秀明」より

投稿者 jam : 2013年06月15日 16:06