« handsomedevil.の革靴日記・12 | メイン | テラオハルミさんのカレンダーです。 »

2009年11月02日

handsomedevil.の革靴に使う革 “バケッタレザー”

_______________________________________________


【 MINERVA-LISCIO / MINERVA-BOX(ミネルバリスシオ/ミネルバボックス) 】

バダラッシ社は、風光明媚なイタリー、トスカーナ州の PONTE A EGOLA地域(フローレンスとピサの中間点)にあるタンナーです。同社は約30年前に、革作りの学校の教授をしていた CALRO BADALASSI 氏が、その理念と技術を実行するため独立して始めた企業です。規模は小さいですが、“バケッタ”と呼ばれるイタリー固有の昔ながらの革を専門に作っています。近代的な革作りを避けて、時間と手間をかけた革作りをする一方で、創造力に富んだ同社は、次々に新しい商品も開発しています。大量生産、大量販売ではなく、少量生産、高品質を目標にしているため、本当に好きなメーカーだけが好んで使用しています。

MINERVA-LISCIO / MINERVA-BOX(ミネルバ - リスシオ / ミネルバ - ボックス)の2素材は、タンニンなめし+染料仕上げのショルダー革(成牛の肩の部分)の高級素材です。栗の木等から取れる植物性のタンニンをなめし剤として使用し、時間をかけてゆっくりとなめす方法で、近代的なクロームなめしに比べるとコストが高くなりますが、環境面ではより問題が少ない製法です。染色には染料仕上げを施してありますので、牛革の自然で素朴な表面の質感が保たれています。薄化粧のため、革の表面の小傷、しわ等が隠れにくく、又表面がデリケートなため爪傷がつき易い等の欠点がある反面、使い込むにつれて艶が増し、色が濃くなり、革味が良くなり深みを増します。初めは気になる革の表面の欠点も次第に気にならなくなり、むしろ「革らしさ」を感じさせてくれるようになり、大量生産の均一化された人工的な革とはひと味違ったナチュラルな素材ならではの革の醍醐味を楽しめる“味”として製品に活かすことで唯一無二の個性ある表情を醸し出す、とても魅力的な素材です。

MINERVA-LISCIO(ミネルバ-リスシオ)は、スムース仕上げ、MINERVA-BOX(ミネルバ-ボックス)はリスシオをドラムに入れて、数時間回転させるさせる事によって、表面に丸いしぼをつけたものです。但し、背中の部分は繊維が固いため、しぼは出ません。「BOX」とはイタリア語で「ボコボコ」「凸凹」を意味しており、その名の通り銀面の表情にはそれぞれ異なる「シボ ※1」感があり、個性を感じさせる仕上げになっています。そして使い込むほどに艶が上がってくる表情、イタリアならではのナチュラル感溢れる色出しは秀逸です。作り手、使い手、ともに納得してお使い頂くことが出来る素材です。十二分に油分が使用されているのいますので製品化後のメンテナンスは乾拭きのみで問題ありません。
※1 表面の凸凹、個体毎、部分毎により表情が異なります。


【 CONCERIA CARLO BADALASSI(カルロバダラッシ社)】

■ 所在地:イタリア PONTE A EGOLA(フローレンスとピサ市の中間にあるイタリア最大の革の生産地)
※ CONCERIA=製革所
■ 創立:約85年前
■ 使用原皮:フランス原皮(アルプス周辺)

タンニングスクールで講師をしていたカルロバダラッシ氏が、徐々に近代化されていくイタリアの革鞣し技術を悲しみ、トスカーナ地区の伝統的な革鞣し技術、8世紀頃から培われ今では非効率ゆえに伝承する者が誰もいなくなり、忘却の彼方にあった「バケッタ製法」を復活させ「革らしい革」作りのために時間とコストがかかることを承知の上で必要なレシピをあえて使用するという、明確なコンセプトの基にモノ作りをしている世界的にも希少なタンナーのひとつです。最大の特徴は、“牛脂”を用い、高効率化の為、現在では省かれた鞣しの工程をすべからず踏襲しています。従って手作業の工程もあり、完成までには時間が掛かります。現在では同社の成功を目の当たりにし、大小様々な工場が似て非なる革を鞣しています。しかし真のバケッタレザーは、イタリア国内で " CONCERIA CARLO BADALASSI " の技術でしか鞣せません。

_______________________________________________

投稿者 jam : 2009年11月02日 20:55