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2016年12月25日

レクイエム

2008年7月22日 13:59
常連客の彼の携帯から電話が。おお♪と出たら彼の奥さんだった。
愛車のオートバイで仕事から帰る途中の交通事故。
一番最近にお店へ来たのはひと月前。
父の日のプレゼントを「JAMJAMで買わなきゃ意味が無い」とわざわざ買いに来てくれた。
そのとき「特攻の拓」の話もしてたっけ。

CROPPED HEADSの髑髏が好きでクロムハーツを身に纏い
どこまでもアメリカンバイクで走っていた彼。
仕事に対しては生真面目で負けん気が強かった彼。
でもメールになるととてもかわいく人懐っこくなる彼。

本当に「スピードの向こう側」に行ってしまった彼はまだ27歳だった。

彼には親友がいた。幼稚園の頃から一緒に成長してきた幼なじみ。
人見知りで大人しいそのマブダチに合いそうな和柄を探しては
「これどう?これならイケるんじゃない?着てみろよ」と一緒に来店してはススメてた。
シャイな友達は「ええ〜、恥ずかしい」とうんと言えなかった。

なんでも話せた唯一の親友を失ってから、彼はひとりで来るようになり
親友が好きだったブランドを着るようになっていった。
「ヤツならこっちを選ぶよね」「これヤツ好きそう」と彼を思い出し
「彼が恋しいね」と一緒に懐かしんでは彼の面影を探していた。

そんなシャイな彼が久しぶりに来店。
「久しぶりじゃん。てっきり死んだかと。」
「実は彼女ができまして、しかも結婚してました。」
「こーれだもんなー。どーせそんなこったろうと思ったよ。」

クリスマスプレゼントが目的だって。あーはいはい良かったね。
どんなのが好きそう?新妻の写真はないの?雰囲気知りたいから見せてよ。

彼とは正反対の明るく社交的で人なつこい性格らしい。
気後れする君にはピッタリだねと冷やかしつつ彼女の写真を見る。

そこにはくったくのない笑顔がいた。どこか懐かしい。
そっか見つけたんだね。

「なんでも話せる連れなんて、たぶんもう一生出来ないと思う。」

七年前の彼の悲しむ言葉を天国からこっそり聞いていたんじゃないかしら。
メリークリスマスと言っても良い気がした今日だった。

投稿者 jam : 2016年12月25日 18:02